前回、「訪問マッサージ」についてご説明させていただきました。
今回は、「訪問リハビリ」との違いについて、医療保険や介護保険の適応も踏まえご説明します。
訪問マッサージとリハビリの違い
●対象
「訪問マッサージの対象」
筋麻痺、運動機能障害、筋委縮などの症状があり、寝たきりや歩行が困難で通院できず、医師に医療上マッサージの必要性が認められた方。
「訪問リハビリの対象」
要支援・要介護者(疾患やケガ、加齢によって何らかの障害を負い、運動や日常生活上必要な身体機能が低下してしまったひと)で、医師に日常生活を送るためにリハビリの必要性が認められた方。
●目的
「訪問マッサージの目的」
・筋力の維持や向上
・脳梗塞や脳出血で麻痺や拘縮があるひとのための関節可動域の維持や拡大
・むくみやしびれがある方のための血液やリンパ液の循環の改善
・強度なコリや疼痛がある方のための痛みや筋緊張の緩和
「訪問リハビリの目的」
・要支援・要介護者が在宅で日常生活を送るための身体能力・状態を評価
・適切な動作指導や住環境の提案
・基本動作である「寝る・起きる・座る・立つ・歩く」などの身体の機能の回復や維持
●サービス提供者
「訪問マッサージ」
「あん摩マッサージ指圧師」「柔道整復師」の国家資格をもった施術者が行います。
「あん摩」は、心臓から末端へかけて「押す・もむ・さする・なでる・たたく」といった手技により身体の変調を整える技法です。
「マッサージ」は直接皮膚に刺激を与え、末端から心臓に向かって血液やリンパ液の循環を良くして新陳代謝を促し、循環器系や消化器系などの疾患を改善します。
「指圧」は、手指や手掌で体表に「圧」を加える技法により、筋肉の疲労物質を除去し、筋肉の正常化と体の均衡を保つことを目的としています。
「訪問リハビリ」
国家資格を有する「理学療法士」や「作業療法士」、「言語聴覚士」「柔道整復師」などが身体機能チェックと動作訓練を行います。
理学療法が担う役割は、日常生活を送るうえで基本となる「立ち上がる・歩く・寝返りをうつ・起き上がる」などの動作をできるようにすることです。
作業療法が担うのは、「移動・入浴・食事・着替え」など、日常のなかでも応用的な動作のサポートです。
また、言語聴覚士は言語機能や嚥下機能を維持・向上させるための訓練を行います。
医療保険
適応範囲
「訪問マッサージ」
「医療保険」のみが適用されます。介護認定の有無は問いません。
「訪問リハビリ」
基本的に「介護保険」が優先されますが、末期の悪性腫瘍やパーキンソン病関連疾患など20ある医療保険の「厚生労働省が定める疾病等」に該当する場合は、「医療保険」が適用されます。
必要な手続き
●訪問マッサージ
医療保険適用での利用には医師の同意書(診断書)が必要となります。
訪問マッサージの利用に期間の制限や回数制限などはありませんが、継続したい場合は3か月ごとに医師の同意が必要となります。
1.かかりつけ医に相談
2.医師の同意の確認
3.ケアマネジャーまたはかかりつけ医に訪問マッサージ師を紹介してもらう(もしくは自分で探す)
4.訪問マッサージが訪問して初回相談(患者の状態・医療保険の確認)
5.医師が同意書を発行
6.訪問マッサージ利用開始
●訪問リハビリ
訪問リハビリの場合は、医師の指示書または診療情報提供書が必要です。
1.担当のケアマネジャーに相談、訪問リハビリ事業所の選定
2.主治医に診療情報提供書、リハビリ指示書など必要書類作成の依頼
3.訪問リハビリ事業所と契約
4.訪問リハビリ事業所の医師がリハビリ計画書を作成
5.訪問リハビリ利用開始
介護保険
適応範囲
「訪問マッサージ」
「医療保険」のみが適用され、介護認定の有無は問いません。
「訪問リハビリ」
基本的に「介護保険」が優先されますが「厚生労働省が定める疾病等」に該当する場合は、「医療保険」が適用されます。
必要な手続き
●訪問マッサージ
訪問マッサージは、「介護保険」の適用外です。
●訪問リハビリ
1.担当のケアマネジャーに相談、訪問リハビリ事業所の選定
2.主治医に診療情報提供書、リハビリ指示書など必要書類作成の依頼
3.訪問リハビリ事業所と契約
4.訪問リハビリ事業所の医師がリハビリ計画書を作成
5.訪問リハビリ利用開始
訪問マッサージ・リハビリを利用するメリット
寝たきりや二次障害を防ぐためには、身体に適度な刺激を与えることが必要です。
しかしながら、歩行が困難な方や介助がないと外出できない方は、自力で医療機関を訪れることは負担が大きく現実的ではありません。
そのため、訪問マッサージや訪問リハビリを利用することで、自宅や施設など指定の場所まで担当者が訪問するため、このような負担が軽減できます。
思うように身体が動かせないと、どうしても家にこもりがちになってしまいます。
外部の人とのかかわりやコミュニケーションが取りづらくなることで、身体面だけでなく精神面にも大きな影響をおよぼします。
このような場合にも、訪問マッサージや訪問リハビリを活用することで、外部との関係(コミュニケーション)を維持することが可能です。
特に、訪問マッサージは心身に癒しを与えるといった役割も担っています。また、身体に負担の少ない訪問マッサージは継続しやすいというメリットもあります。
訪問リハビリの場合は、福祉用具や自宅の生活環境・介護環境に関する助言、家族からの介護に関する相談などにも対応し、在宅介護をしている世帯にとっては心強いサービスです。
どちらのサービスも実際にサービスを受けられるご本人様、ご家族様に寄り添った誠意ある対応をとってもらえます。